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おりてこない
「ちょっと二階に行ってくる。」
息子が呟いた。
「もうすぐ夕飯なんだけど、用事はすぐ終わるの?」
私は少し不満そうに返した。
息子は、
「やりたい事がある、しばらくおりてこないから。」
と呟くように返事をし、少し早足で自室のある二階へと消えていった。
「呼んだらすぐ降りてくるのよー!」
かすかに返事が聞こえた気がした。
それからというもの、
何十分、何時間と息子はなかなか降りてはこなかった。
いつまで自室にいるつもりだ、しびれを切らした私は、
「いつまでこもってんの!夕飯冷めるから早く降りて来なさい!!」
と大口開いて叫ぶように呼びかけたが、返事はなかった。
仕方なく、息子がいる二階へと足を動かした。
結局息子は、
わたしがおろすまでおりてはこなかった。
かすかに「ごめん」と息子の声が聞こえた気がした。
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