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真壁厚の問題
あぁ、最悪だ。
鰆岩ハイクが嫌なわけじゃない。
よりにもよって、春の山歩きなんて。杉だらけじゃないか。
そう、厚は重度の花粉症である。
もちろん、薬は飲んではいるのだが、この圧倒的な杉の量にはサンドバッグ状態である。
隆の計画にのってやったが、行き先がまさか菅平だとは思わなかった。
まぁ、それはそれで良かったのかもしれない。
ラグビー生活との区切りにもなるし。
社会人ラグビーチームからのオファーはあった。
でも、冷静に評価して、俺の実力では次のステージに行けるとは思えなかったので、これで引退することに関しては納得している。
だから、ラグビー中心の生活にピリオドをうち、母の手伝いをすることにした。
ラグビーとの出会いは中学生のときだった。
家電量販店でつけっぱなしになっていたラグビー中継をたまたま見ていたとき、
屈強で巨大な男たちの中に、一際小柄な選手が目に入ってきた。
スクラムから出てくるボールは必ずその選手が一旦受け取り、そしてバックスからの攻撃に展開されていた。
厚には彼がチームの核に見えた。
そして、ときには自分の倍くらいはあるんじゃないかと思える相手の選手に身体ごとタックルでぶつかっていく。
その強さに衝撃を受けた。
元々、運動神経には自信があった。
小学生の頃まではどんな競技でも俺が一番だった。
中学ではバレー部に入った。
希望はアタッカーだったが、背が低いという理由でリベロを押し付けられた。
誰よりも上手くスパイクが打てる自信があった。
誰よりも高く飛べると思っていた。
しかし、レギュラーの先輩たちはみな175cm以上、高い人は180cm以上の人もいた。
自分の身長では埋められない差を肌で感じた。
それでも、成長期がくればグンと身長が伸びると信じて部活に励んだ。
しかし、無情にも身長は162cmで止まってしまった。
バレー部を辞めはしなかったが、最後まで悔しい気持ちが残った。
そんなときにみたラグビーの試合。
胸が震えた。
自分は身体が小さく、スポーツには向いてないと腐っていたことが恥ずかしくなった。
そして、ラグビー部がある高校に進学しようと決め、図書館にラグビー関連の本を探しにいった。
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