6人が本棚に入れています
本棚に追加
美樹いわく、美貴には実際に美樹という双子の姉がいたそうだ。
いた…。
幼稚園のときに、美貴の目の前でトラックに跳ねられて亡くなったそうだ。
美貴は自分を助けるために、美樹が身代わりになってひかれた…
と認識しているようで、その後悔や罪悪感で美貴自身が壊れないための適応規制として自らの中に美樹の人格を取り込み、精神の安定をはかっているとのこと。
その作り出した姉、美樹は、美貴とは真逆で、明朗活発で竹を割ったようなさっぱりとした性格であった。
「でも、あくまでも主人格は美貴であり、コントロールもおそらく美貴が行っていて、私の方が好き勝手に操れるってことはないし、私も迷惑かけないようにできるだけ美貴に似せているつもりなんだけどね」
雨のなか、子猫をかかえながら厚のアパートまで帰ってきた。
子猫は美樹がしっかりガードしていたので、ほとんど濡れていなかったが、二人はずぶ濡れであった。
厚はシャワーを浴びようと泥だらけの服を脱ごうとしたが、美樹をみて躊躇った。
「大丈夫よ。今さら意識しなくても。
いつも部活で見てるし、なんとも思わないから」
美樹はそういったが、やはり躊躇われたので、浴室の中に入って服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
熱いシャワーを浴びると、思いの外、体が冷えていたのに気づいた。
急いで浴びて美樹と交代してやらなきゃな。
美樹の裸は美貴の裸だから、意識するのはやっぱりおかしいのか。
でも、自分の裸を美樹に見られるのはどうなんだろう?
美樹はいつも見てるからなんとも思わないといっていたが、それはこちらが美樹の存在を認識していなかったわけで…
考えがまとまらないまま、バスタオルを腰にまいて部屋に戻り、美樹にシャワーをすすめた。
美樹はありがとうといって浴室に向かったが、厚の体には視線を向けないようにしていた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!