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子どもの頃からよく女の子と間違えられた。
亡くなった姉と間違える人もいて、その度に心にチクリと痛みがはしる。
そして、両親がばつの悪い顔をしているのを見てもう一度チクリとする。
人の顔色ばかり見て生きている自分が嫌いだった。
小学生の頃からスポーツは苦手ではなかったけど(足も速かったし)、別に好きではなかったので帰宅部だった。
だけど、中学生になったとき、美樹が勝手にサッカー部に入部した。
理由はおそらく好きな男子がサッカーをやっていたから。
いつもではないんだけれど、時々、自分の記憶が曖昧なときがある。
そういう時は美樹の人格が優位になっているときなんだろう。
最初は戸惑ったけれど、この頃には慣れていたし、情報の共有もできるようになっていた。
サッカー部では長身で手足も長いという理由でゴールキーパーをあてがわれた。
別にサッカーが好きだった訳ではないので、ポジションはどこでも良かったんだけど、ゴールを守るという行為が意外にも性に合っていた。
普段の自分は気弱で優柔不断である。
なのに、なぜかゴールを守っているときだけは違った。
いつも他人の顔色ばかり気にして生きていたせいか、危機回避能力というか、相手が考えていることがなんとなくわかる気がして、最適な行動を取ることができた。
相手が次にどの選手にパスを出すのか、どこのコースを狙ってシュートを打つのか、手に取るようにわかり、迷うことなく身体が動いた。
自分にこんなことができるなんて!
サッカーをしているとき、ゴールを守っているときは自分に自信が持てた。
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