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真壁厚とは雄介の居残り練習の数ヶ月前、
そう、夏のとあるのどしゃ降りの夜にひょんなことから特別な関係になった。
恋人であってるよね。
みんなには内緒だけど、あんなことやこんなことだってしてる訳だし。
ただ、ややこしいのが、ここに美樹がからんでるということ。
美樹は幼い時に死別した双子の姉。
そして、自分の中に取り込まれた別人格。
自分がピンチの時に助けてくれる頼もしい存在なんだけど、
いや、わかってる。
これは自分の弱さが生んだ偽りの存在なんだって。
「適応機制」とか「防衛機制」なんていうらしい。
幼い時に目の前で車にひかれたはずの姉の記憶がないことも、ショックから身を守る「防衛機制」だったんだろう。
それがリンクしてしまっている。
あの夜、驚愕と緊張と歓喜でどうしたら良いかわからなくなり、美樹に頼ってしまった。
美樹じゃなく、美貴としてちゃんと厚と向き合わなきゃ。
でも、今の関係性が壊れてしまうのが怖くてできないでいる。
いや、いつまでも弱虫じゃいけない。
今日こそは勇気をだして厚に打ち明けよう。
美樹じゃなく、美貴を愛して欲しいと。
傾斜が厳しくなった登山道、
隣を歩く厚のリュックに付いている雨太郎のキーホルダーも今までよりも激しく揺れている。
僕のリュックでも雨太郎もきっと激しく揺れているのであろう。
鰆岩までもう少しだ。
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