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横溝隆は父親を知らない。
隆が物心つく前に母と離婚し、親権は母親が持つこととなった。
一人親で苦労をしたかというと、そうではない。
母方の家系は代々の資産家で、その援助を存分に受け、何不自由ない生活ができた。
父親のことは、母も祖父母も教えてくれなかった。
でも、さすがに名前くらい、出生関連の書類に書いてあったので知ることができた。
そして、小学四年生のときに図書館で父と同姓同名、そして同じ生年月日のラグビー選手を見つけた。
ラグビー雑誌で見たその写真は、筋骨隆々の逞しい身体、髭をたくわえ日焼けした野性的な顔の男がラグビーボールを抱えて勇ましく走っている姿だった。
正直、自分とは全然似ていないと思った。
でも、想像していた自分の理想の父親像よりもさらに上をいく素敵な姿だった。
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