五十川雄介の視点

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 「おい、それにって何だ?   混浴ってことか?」    食いついたのは塩満元太(しおみつげんた)だった。  塩満元太、ポジションはプロップ、フォワードの最前列でスクラムの要である。  純粋にパワーが求められるポジションを任せられているだけあって、その体躯は178cm、110kgと巨漢である。  大地に根を生やした大木のような下半身にプロレスラーというかゴリラのような上半身が乗っかっている。  無造作な短髪は床屋や美容院に行くのが面倒だからという理由で、伸びてきたらバリカンで坊主にしている。  実は元太とは高校から一緒であり、俺の憧れの男でもある(もちろんそんなことは本人に言ったことはないのだが)。  性格は単純、豪快、そして優しい。  強面な外見だが、困っている人を見かけると、躊躇いなく身体が動き手助けをする。  その献身さを本人は自覚していない。  「なぁ、混浴って、俺、入ったことないよ。  女と一緒に風呂に入るって、昔、母ちゃんと銭湯の女風呂に入った以来だし、裸なんて恥ずかしくてドキドキするなぁ」  なぜか元太の頭の中では完全に混浴ってことになっているが、  ちょっと意外で驚いた。  高校生のときから、彼はクラスの人気者だったので、女性経験も当然それなりにこなしているとばかり思っていた。
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