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もどかしいと言えば、真壁厚と瀬名川美貴の二人もだ。
二人は親密な関係だ。
それは間違いない。
厚から直接、聞いたことがあるからだ。
厚とは戦術の打ち合わせや相談でよく一緒の時間を過ごした。
その日もいつものように図書館のブースで厚とミーティングをしていた。
背が低く童顔でかわいらしい見た目、いかにもスクラムハーフといった感じだが、性格はクレバーで強い。
ゆえに、最初はちょっと苦手だったけど、戦術の話をするようになると、それは時間を忘れるほど楽しかった。
講義やレポートなどでかなりサポートをしてあげたけど、そんなときにはラグビー以外の話をしたりもした。
その時に瀬名川美貴との関係をカミングアウトされた。
美貴は華やかな見た目と抜きん出たラグビーセンスを持ち合わせており、スター性抜群の男だった。
「美貴のこと、どう思う?
何かこう、ちょっと変わってるとかそんなことないか?
ほら、なんか試合中と普段の美貴って別人みたいというか…」
確かに普段の美貴は少し気弱なところはあるけれど、それがどうしたのか?って軽く聞き流していたが、
厚は美貴には美樹という死別した姉の人格があり、その美樹と自分は付き合っているとカミングアウトした。
軽く聞き流していたため、一瞬、脳の反応が遅れた。
そして、時間差で衝撃が走った。
えっ、どういうこと?
美貴は二重人格?
美樹って姉は実在した?死別って?
付き合ってるって普通に言ったよな?
厚はゲイってこと?
いや、違うか、美樹は女性だし
でも、美貴は美貴だろ
やっぱりお仲間?
俺のことも気づいてるのか?
何か建設的な意見を求めてる?
色んな事が頭の中を駆け巡ったが、出た言葉は…
「おう、好きなら問題ないんじゃないか。俺は応援するぞ」
いつもの平静を装うつまらない言葉だった。
「そうか、そうだな。サンキュー」
と言って厚は何も特別なことはなかったかのごとく去っていった。
おいおいおい、一体どうなってるんだ。
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