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「おしっ!
みんな飯は食い終わったか?
そしたら、メインイベントの露天風呂へ行くぞ!」
千洋さんの掛け声を合図にみんた立ち上がった。
「ここからどれくらいですか?」
隆が聞くと、ほんの5分もかからないとのことだった。
千洋さんと隆を先頭にみんなが着いていく。
先ほどまでとは逆にその後ろに元太と俺、そして、最後尾に厚と美貴が続いた。
山頂までの尾根づたいのルートを外れ、横路というか、まだ、完全には整備されていない獣道に近い道を行く。
すると、すぐに少し開けた場所に出た。
そして、そこには、露天風呂らしき物が本当にあった。
千洋さんいわく、
この場所には以前から源泉が沸いていたそうだ。
ただ、誰も管理する人がいなく、放置されていたとのこと。
それを聞いた千洋さんが、昨今のハイキングや登山ブーム、そしてSNSの広がりがあれば、ここの温泉と鰆岩までの登山ハイクは絶対に地元のウリになると、地元の観光協会の人達を説得し、少しずつ整備をして、ようやく人が入れる露天風呂としての形を作り上げたとのこと。
周りは完全に山に囲まれている。
石組みや木材で浴槽部分を補強された露天風呂は一度に10人くらいは入れそうだ。
露天風呂の横には木製の手作りベンチが置かれ、そのすぐ横の脇道を下ると流れが緩やかな川に降りることができる。
ベンチとは反対側には、脱衣場として使う小さなログハウス風の建物がある。
すべて千洋さんが時間をかけて作り上げた物だった。
この男のDIYスキルはとんでもない。
しかも、これを完成させるまでに、ペンションとこの場所をいったい、何回往復したのであろうか?
恐るべし八坂千洋。
「これから観光協会の人間や役場の人間を交えてもろもろの手続きを踏まえて観光資源としてアピールしていく予定だ。
だから、まだ、名前もない、そして本当に一部の人間しかしらない幻の露天風呂なんだぜ!」
幻の…
そういう事か。
昨日の夜の含み顔、そして今のドヤ顔、
全くもって、すごい男だ。
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