ペンション千洋

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ペンション千洋

 鰆岩に戻ると千洋さんが、リュックを枕にそして帽子を日除けにして寝転がっていた。  「千洋さん、遅くなりました。」  隆が声をかけると、  「おう、その様子だと上手くいったみたいだな。」  と笑顔とどや顔で俺たちを見回した。  「よし、じゃあペンションまで戻るとしよう。」    帰り道の足取りが軽いのは、下り基調だからという理由だけではないであろう。  歩くたびに、喜びが滲み出ててくる。  でも、これは卒業旅行。  俺は元太と暮らすと決めた。  それは新しい旅立ちだ。  でも、ラグビーという競技からは卒業する。  何の取り柄もなく、地味で卑屈に生きてきた俺の人生を変えてくれ、素敵な仲間と出会わせてくれたラグビーとのお別れだ。    厚も競技からは離れると言ってた。  卒業後も次のカテゴリーでラグビーを続ける、隆、元太、美貴には心からエールを送りたい。  
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