3人が本棚に入れています
本棚に追加
1.九條
「『君はまるで蝋人形だ』」
そうやってせせら笑う声に不快感を感じた。
何度も、何度も。言われ続けてきたことなのに、慣れない。
自分が今のまま変わらないことにも苛立ちを覚えるからだろう。自分自身も嫌になる。
一緒に寝ている男に背を向けて、逆方向を向いて目を閉じた。
「そんなこと言うなら一緒に寝るなよって感じかな」
「わかってるなら一緒に寝るなよ」
「冷たい男だなあ!ここまでやっといて!」
「はあ?何言ってんだ…?風邪引いてる俺の横で寝てるだけだろうが!」
「ごめん、ごめんて!」
俺は鼻水をすすり、咳をし、くしゃみもついでとばかりにかました。
わざとじゃない。本当に風邪だ。
なんなら移ってしまえ。
最初のコメントを投稿しよう!