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「では、貴方が発見されたところから」
河合は流れるように脚を組み、組んだ手をその上に置いた。
「原が貴方の家に行ったのは、午後8時半頃。貴方宛ての書類があったため、それを渡しに。
鍵は掛かっていなかったそうで、どうやら人がいた痕跡があったようですね。
それから寝ている貴方に話しかけても反応無し。首の痣から首を絞められたことに気づくが、脈拍は正常。
周囲を確認して人がいないことを確認、のち、貴方を安全な場所──つまり、この事務所へと車で運んだ」
そこまで言うと、原が「どうぞ」と渡した珈琲に口をつけた。
俺と倉田が一緒にいたのが午後8時すぎぐらいだった。今の話からして…倉田がその場から逃げるには十分時間があったってことになるな。
くそ…風邪じゃなけりゃ捕まえておけたってのに。
「それと、彼──『九條』についてですが、元々『倉田界』を名乗って暮らしていることは知ってますね」
俺は河合の確認に頷く。
あいつの口から聞いたのが初めてだったが、クライアントの正体には突っ込まない主義が裏目に出た。
「では、春川瑞生、颯馬兄弟のことは覚えていますか」
「え、ええ…」
戸惑いながら、俺は首を縦に振った。
当然…覚えている。
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