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横にいる男は仕事用の名が「九條」だという、俺の雇い主だ。
俺は個人で掃除屋を営んでいる。
だが、それも日が差すような綺麗な仕事じゃなく、裏の掃除屋──つまり、殺しなどの案件を「事件」にしないために証拠を隠蔽する仕事なのだが。
九條もそのクライアントの一人…なのだが、こいつの場合妙に馴れ馴れしく、俺を含め他の「従業員」にも気楽に話しかけてくる。
だから距離感が『友だち』関係のそれであるため、俺も従業員も、もはやタメ語を使ってしまっている。
人を惹き付ける力が強かったり、惑わす力が強かったりするのだろう。
実際、こいつに振り回され、「死んでいった」者も多かった。
そして俺が呼ばれるのはいつも事後。
傷んでいたり、状態が良かったりその時その時で見た目が変わっている遺体は、置いておくか、持ち去るか、それは九條の判断次第。
証拠を残すことは一切せずに、『キレイにして』とだけ俺に指図する。
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