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「あれ……なんで……」
机の上にはこっくりさんで使う紙と十円玉しか残されていなかった。
あわてて廊下に出ている教室のプレートを確認する。間違いない、ここはさやかの教室で人形が置いてあったのもこの教室だ。
なのに、ここにあるはずの人形が……ない。
「人形が動いてる……?」
口をついて出た言葉は誰に向けたものでもない。自分自身に向けたものだ。もちろん自分で言った言葉のはずなのにそれをバカバカしいと思う。
そう思うはずなのに、人形はない。
どうしよう……人形をみつけないと……。
そう思った時だった。
トントン、
「──!!」
不意に肩を叩かれた。恐る恐る振り向くと、そこには……、
「アキ、なにやってんの?」
そこにいたのはさやかとエリだった。
「さやか……エリ……」
二人の顔を見て安心したら体からふっと力が抜けた。
「ちょ、ちょっとアキ!?」
「大丈夫!?」
「う、うん……大丈夫……」
わたしは二人に支えられながらゆっくりと姿勢をただした。
「どうしたの? 顔真っ青だけど」
「うん……じつは人形が……」
わたしが指差すとさやかもエリも顔を引きつらせていた。
「人形がなくなってる……」
「だ、誰かが隠したんじゃ……」
「……誰も学校にいないのに誰が隠すのよ」
「そうだけど……」
わたしたちの中に重い沈黙がおとずれる。
「もうやめよう……なんか気分悪い」
沈黙を破ったのはエリだった。さやかが不安を隠すことなく言い返す。
「でも……人形をみつけないとあけびちゃんが……」
「きっとどこかに落ちてるんだよ。それにほら」
さっきまで明るかった外はすっかり暗くなっていて、教室の中までも覆いつくそうとしていた。
「もう暗いし、人形を探すんだったら明日でも探せるよ」
「さやか、わたしもエリの言うとおりだと思う」
「でも……」
「心配なのはわかるよ。でもあんなのただの噂話じゃない。なにも起きないって」
「そうだよね……うん、わかった」
二人がかりで渋るさやかを説得すると、ようやく納得してくれた。
「ねぇ、帰りに駅前でハンバーガーでも食べていかない? わたしお腹すいちゃった」
「賛成」
「……うん」
さやかはまだなくなった人形のことを気にしていたみたいだけど、強引に教室から連れ出すといつもどおりのさやかに戻っていた。
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