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しかし、異変は翌日から始まった。
珍しく早く目が覚めた。携帯に表示されている時刻は六時。いつもだったらまだ夢の中にいる時間だ。
もう一度寝直そうか。そう思って布団をかけようとして……気づいた。
「メール?」
携帯の画面にはメール通知の表示が出ていた。差出人は見たことのないアドレスからだった。どうせスパムメールだろうと、メールを開いてわたしは凍りついた。
メールの件名にはこう書いてあった。
件名:かくれんぼ
震える指を抑えながら画面をスクロールしていく。書かれていた内容はたった一文。それでもわたしの心を打ち砕くには十分だった。
『必ずみつけるから』
わたしは持っていた携帯を放り投げていた。
そんな……だって……あれはただの噂話で……。
そうだ。あれはただの噂話だ。
こんなのただのイタズラにしかすぎない。
だったら……誰がこんなメールを……?
外は昨日の天気とはうってかわって大降りの雨が降っていた。
「ねぇアキ、エリ知らない?」
いつもと同じ昼休み、同じくいつもと同じようにわたしのクラスにやってきたさやかは、どこか落ち着きがなかった。ああ、落ち着きがないのはいつものことだけど、今のはちょっと違う。どこか不安そうにしているせいだ。
「エリがどうかしたの?」
「その……さ、今日エリ学校に来てないらしいんだよね」
「……」
わたしの中に不安という名の暗雲が立ち込める。
「あたしあのあとエリに電話したんだよね。やっぱり心配だったから」
さやかの言うあのこととは、昨日わたしたちがやったあの儀式のことだ。わたしはいつも飲んでいる野菜ジュースを飲み干すと、さやかに向き直った。
「……それで」
「うん。あたしエリに電話したんだけどさ……エリの携帯つながらなかった」
「たまたまじゃない?」
「あたしだってそう思ったよ。でもさ、何回もかけたんだよ。なのにさ、何回かけても、電波の届かない所にあるか電源が入っていないってアナウンスしか聞こえてこないんだよ! もしかしたらこれってさ……」
「そんなわけないじゃない!」
思わず声を荒げていた。そんなわたしの様子にさやかだけじゃなく、クラス全員が驚いてこちらを見ていた。
「……ごめん」
「ううん、あたしも言っちゃいけないこと言った。ごめん」
二人して頭を下げる。でも、今大事なことはそれじゃない。
まさか本当にあけびちゃんが……。
「エリどうしちゃったんだろ……」
「わたしがかけてみようか?」
「だって、昨日何回もかけたんだよ。つながるはず……」
「もしかしたらつながるかもしれないじゃない。それにつながればエリが無事だってことがわかるし、わたしだって心配だから」
「そうだね」
わたしがさやかに言ったことはまるっきり嘘じゃない。わたしだってエリのことが心配だ。でもそれ以上に心配なのは、あの話が本当なのかどうかってことだ。
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