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エリが学校に来なくなって一週間が経った。
翌日学校へ行くとエリのことが噂になっていた。
家出をしたとか、知らない人と駆け落ちをしたとか、根も葉もない噂話に尾ヒレがついて、一人歩きしていた。クラスでも何人かの女子が噂していた。いつもなら笑って聞き流すレベルの話だったけど、今はそんな気分になれなかった。
昼になるとさやかがいつものようにやってきた。もちろん彼女の顔色も良くない。
「……エリのことすごい噂になってるね」
「そうだね」
わたしは不安を隠すようにそっけなく答えた。いつもの野菜ジュースも美味しく感じない。
「エリどうしたんだろ……」
「あんた大丈夫? 顔色悪いけど……」
朝になって母親に言われた言葉がそれだった。
無理もない。結局、あのあと一睡も出来なかった。目を閉じたらあけびちゃんが追ってくるような気がして、目を閉じることを体が拒否したからだ。
「もし体調が悪いんだったら学校休んだら?」
「うん……そうする」
いつもだったら無理してでも学校に行かせるはずの母親が、珍しく優しかった。それだけひどい顔をしていたのだろう。風邪をひいてるわけじゃなかったけど、どちらにしても学校へ行けるような気分じゃなかった。その日は一日休むことにした。
学校を休んだわたしを心配したさやかから電話がかかってきたのは昼ぐらいの頃だった。
「もしもしアキ? あんた大丈夫? あんたまで学校休んじゃったからもしかしてって思ってたけど、元気そうだね」
「おかげさまでね。それよりもごめんね心配かけちゃって」
「ううん、いいよ。アキが無事だってわかったんだし。それよりもさ、聞いた? エリのこと」
「……うん、昨日聞いた。今日は学校に来てる?」
「……来てないみたい。家の方にも連絡いってないって言ってたらしいし、やっぱりこれって……」
「考え過ぎだって。エリだって子供じゃないんだし、すぐに見つかるって」
「そうかな……そうだといいんだけど」
それだけを言い残してさやかとの通話を終えた。
……やっぱり来てないんだ。
わたしは持っていた携帯をベッドの上に放り投げると、力なく体をベッドの上に倒した。
さやかは無事だった。もしかしたらエリのこともただの偶然かもしれない。
けれど、本当にそうなんだろうか?
「なんだか眠いな……」
そういえば昨日からずっと起きたままだったんだ。うっそうとした気持ちを抱えながら、目を閉じるとわたしの意識は睡魔に溶け込んでいった。
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