あけびちゃん

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「もしもし?」 「アキ……? よか……やっと……がった……」  携帯からはザザ、という耳ざわりなノイズ音が混じっていた。 「もしもしさやか? 今どこにいるの?」 「……わたし……いまがっこう……いる……」 「学校? なんで?」 「に……う……みつけ……と……だめ……あ……エリ…………たしの……ばんだから……はやくしないと……」 「ごめん、聞こえない。なんて言ったの?」 「……にんぎょう……さがさなきゃ……」 「人形? まさか……さやか!」 「……なに……これ……まさか……いや……いやぁぁぁぁぁ!!」  ガタン! ガタガタ、ゴツッ!  「ねぇどうしたのさやか! さやか!?」  電話ごしに聞こえてきた聞きなれない物音に、わたしはここが自分の部屋だということも忘れて叫んでいた。 「さやか! ねぇなにか言ってよ! さやか!!」  わたしが何度も何度も電話の向こう側にいるはずの友人に呼びかけてみるが、さやかの声は聞こえない。  けれど、  ピチャ、ピチャ、  なにこの音……。  水の滴るような音。  そして、 『さやかちゃんみぃつけた』  ブツッ、ツーツー、電話が切れた。  なに? なにが起こったの!?   わたしが放心していると、再び携帯が鳴った。今度はメールだ。  差出人は……さやかだ。  件名:かくれんぼ  本文:さやかちゃんはみつけたよ。つぎはあなたのばんだからね。  そして添えられていた写真には、頭から血を流して、目を見開いたまま死んでいるさやかの変わり果てた姿が──。 「う……うわぁぁぁぁぁぁ!!」  わたしは叫んでいた。  どうしようどうしたらいい? あけびちゃんがあけびちゃんが! さやかが! あけびちゃんに! あぁぁぁぁぁっ!!  つぎはわたしのばん。もうどこにもニゲラレナイ。  すでにわたしの心は限界だった。
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