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その日一日はなにも頭に入ってこなかった。
いつもどおりの日常に、いつもどおりの風景。そのはずなのに今。目に見えているそれらすべてが映画のスクリーンに映っているように見えた。
朝学校に行くと、さやかが死んだことを知った。
死因は学校の階段から足を滑らせた結果、頭を強く打っての失血死だということだった。
しかし、死亡推定時刻をみると死んだとされるのは夜中の二十三時。つまり、わたしに電話をかけてきた時に死んだことは間違いない。けれど教師や噂好きのクラスメートたちは、さやかが死んだことよりも、こんな時間に学校にいたことのほうが不思議だと話していた。
さやかがいた階段は、きれいに掃除されていた。さやかの机には形だけの花束と笑っているさやかの写真がおいてあった。それを見ると、あらためてさやかが死んでしまったことを意識させた。
「さやか……」
今はもういない友人の名を呟く。もしあの時わたしが儀式を止めていたら、こんなことにはならなかったのだろうか。もしあの時わたしがもう少し早くさやかからの着信に気づいていたら、こんなことにはならなかったのだろうか。もしあの時……。
いくつものあの時を重ねても、さやかは帰ってこない。
さやかを殺したのはわたしだ。
だったらわたしも……。
『必ずみつけるから』
またあの言葉がよみがえる。
いいよ、みつけてごらん。
でもわたしはあんたの思い通りにはならない。
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