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「ずいぶんとあっけない最期だったね。もう少し頑張ってくれるかと思ってたのに」
“彼女”は屋上から“それ”を見ていた。“それ”はかつて自分の友人だったもので、今では潰れたトマトとなんら変わらない姿をしていた。
人が死ぬってこういう感じなんだ。“彼女”が“それ”に抱いた感想はそんなあっけないものだった。
そしてこうも思う。
「ま、さやかが死んだのは予想外だったけど、これでわたしの思惑どおりになったってことだよね」
夕焼けに照らされて“彼女”──エリがクスリと笑う。
「それにしても、あけびちゃんなんているわけないじゃない。あんなのわたしの作った噂話なのに」
エリは自分の作った噂話が予想以上の効果を持ったことに満足そうにしていた。
そう、すべてはエリの作った噂話だった。もともとエリは怖い話が嫌いではなかった。むしろ好きな方だった。そこで試しにと自分が考えた噂話を流してみたところ、それがたちまち広がってこの最悪な結果を招いたのだった。
しかし、エリの目的はほかにあった。
「でもさアキ、あなたが悪いんだよ。あなたが雅治くんをわたしから取ったから」
エリの目が冷たさを増していく。
「あなたにとって雅治くんとのことは遊びだったかもしれない。でもさ、雅治くんは本気だったんだよ。だからわたしは身を引いた。雅治くんのことが好きだったから。想いが伝わらなくてもそれでもいいって思ってた。それなのにあなたはそんな彼の想いを踏みにじった。雅治くんはずっとあなたを、あなただけを見ていた。」
そう言ってエリは持っていた人形を屋上から落とした。すでに息絶えた友人への花束がわりに。
「これでかくれんぼもおしまい。よかったね、無事にみつけられて」
もう一度屋上から“それ”を見下ろすと満足そうに笑った。
「さて、これで全部終わったし、今からどうしようかな。駅前のハンバーガーは食べ飽きたし、そろそろ家に帰らないとまずいよね。でもその前にこの間出来たカフェに行ってみようか。この時間だったら空いてるかな」
エリはフェンスから離れると学校へとつづく階段へと向かっていった。
しかし、
ピリリ、ピリリ、ピリリ、
エリの携帯が鳴った。
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