うるさい、うるさい。

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――くそ、くそくそくそくそ!どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!  隣の家に住んでいるユーチューバーが誰なのか突き止めて、その迷惑行為を晒してやりたかった。けれど、俺は残念ながらネットにはあまりにも疎い。金髪でホラーゲーム実況をしている配信者など山ほど存在しているらしく、俺の拙すぎる情報収集能力ではあまりにも突き止めるのが困難だった。そもそも、奴が顔を出して生放送をやっていない可能性も充分に考えられるのである。  あんな人に迷惑をかける仕事を、今の子供たちはキラキラした眼で望むというのだからまったく世も末ではないか。世の中全部が腐っているとしか思えない。ユーチューブもそれを利用するバカどもも全部滅んでしまえばいいのに、と感じる。 「……ックソ野郎!」  少しイライラしながら沈黙すれば、再び壁の向こうで実況が再開されてしまった。快活に笑う青年の声がする。何を言っているのかまではわからないが、反省していないのは間違いなかった。もしかしたら、真っ当な注意をしただけの自分を、ネットで笑い者にしているのかもしれなかった。  あのオジサンマジデキモーイ!とかなんとか言っているのかもしれない。そう考えると、胃の底からさらにどろどろと濁った感情が溢れ出してくるのを感じた。  許せない。あまりにも、許しがたい。  しかし年輩の管理人は何もしてくれないし、地方から出てきた自分には頼れる知り合いや友人もいない。 「くそがっ……!このくそ野郎がっ!死ね、死ね、死ねっ……!」  安物のベッドに寝転んで、ひたすら罵倒を口にし続けた。  それで気が晴れるはずもなかったけれど。
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