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再びブザーが鳴って、ドアが閉まった。汐菜がドアにもたれて、こっちを食いいるように見つめている。その瞳から、どっと涙があふれた。
笑って、有楽は手を振る。
もしかしたら汐菜は、有楽も同じだとわかっていたのかもしれない。
だからこそ、あえて自分には本当のことを話してくれたのだろう。でもこのことを兄には決して伝えない。墓場まで持っていく、彼女と有楽だけの秘密だから。
有楽は叫んだ。
兄を裏切った人に、幸せになってもいい、と言ってしまった。
(ごめんな、兄ちゃん)
悪いと思うのに、それでも有楽は笑ってしまっていた。
大声をだしたせいか喉がかすれて痛くなった。でも、何故か爽快な気分だ。学校で感じていた重苦しさから、ようやく解き放たれたような感じがした。
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