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結局、二人のことは噂だけで確証は無いということになり、原田だけが一週間の謹慎になった。
一時間目が始まる前に、しれっと戻ってきた新堂は、相変わらず無口で、誰とも目を合わさず、さっさと席についていた。
すごい心臓だな、と改めて思う。
クラス中から、好奇心剥き出しの目で見られても、涼しい顔で姿勢よく座っている。銀縁の眼鏡のせいか、表情も冷たく感じる。
見ているうち、同情の気持ちが薄れ、だんだん腹が立ってきた。
真偽のほどは定かではないが、原田は謹慎になったというのに、悪びれもせずクラスに居座っている新堂が憎らしく思えた。
かといって、あからさまに文句も言えない。
(……とことん弱いな、俺は)
どんな相手にも強く出られないのは、きっと後ろめたさがあるせいた。もし自分も男が好きでなければ、もっと堂々と新堂に意見も言えたかもしれない。
隠したいことがあると、人間はどうしても臆病になる。新堂を見つめる有楽の瞳に、わずかに憧憬が含まれているのに、本人だけが気づいてなかった。
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