世界が色づいた時

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完食後、満腹になった私は母に甘える。 「お母さん、今から耳かきしてくれない?」 母の白い腕を握ってお願いする。 「えー、これから洗い物もあるのよね」 「私も手伝う!」 すると母は、困ったようにため息をついて、 「そお?ならいいわよ。六年生にもなって甘えん坊ね」 と頭を撫でた。 「やったー」 私は思いっきり母の胸に抱きついた。 母親だけにある包容力に身を任せると、柔らかな柔軟剤の匂いがする。 「葵も、お姉ちゃんの甘えん坊には困っちゃうわよね」 葵は、こっちを見ずに「うん」とだけ言って、SF本の続きをむさぼるように熟読していた。 「綿棒持ってきて」 「はーい」 私は走って洗面所へ行き、目当てのものを取りに向かった。
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