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 蒼は瑠璃のスカートを掴むとポロポロと涙をこぼして抗議をした。 「ちょっと待って!おばあちゃん!蒼のお兄ちゃんはいなくなるってこと?ねえ、なんで?なん……」 「あ、蒼!お婆様を困らせないで!」  泣きじゃくる蒼を母親は、必死に止めようとした。  そんな妹の様子に、青龍の胸は痛んだ。 「……蒼」  家族の言うことに文句も言わず、わがままを言ったことがない妹がこんなに泣いて親を困らせている。……しかも、その原因は自分にある。  蒼は他の家族がどんなに青龍を蔑み、一族の恥と罵ろうとも離れたがらず、懐いていた。  青龍が親と喧嘩をして家を出ていった時も、蒼が大泣きする声がリビングの外にまで聞こえていたのを思い出した。 「わりいな。もうオレはお前のお兄ちゃんじゃなくなるんだ。」 「……うぅ……なんでぇ……やだよぉ……」  青龍はしゃがみ込み、蒼と同じ目線になった。  蒼の大きな目には涙がいっぱいあふれ出ている。  きっとあの時も同じように泣いたに違いない。 「オレは家にはもう戻れないんだ。」  青龍がそういって、蒼の頭を撫でようと手を伸ばした。  だが、それは間に入った瑠璃によって止められた。 「蒼、その男はもうあなたのお兄さんではありません。」 「おにいちゃん!」  息子だけでなく、娘まで失いたくはない。  母親は瑠璃の怒りがこれ以上大きくなることを恐れ、青い顔をして蒼の手を引いた。 「……行きますよ。」 「や、やだぁ!おにいちゃん!」  小さな女の子の抵抗は、大人たちによってあっさりと止められてしまった。  青龍は伸ばした手をそのままに、ただぼんやりとその様子を見ていることしかできなかった。
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