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「すみません」
「ほい、いらっしゃい」
私は露店の中に入った。露店は髪結いの飾りや、ブレスレットや指輪が沢山あった。
「おや、お嬢ちゃんは竜なのに変わった色をしとるんだね」
「え?」
私の真後ろには背中の丸まったお婆さんが杖を付きながら頷いていた。
「え、えっと」
「ほう。お嬢ちゃん、贈り物を探しとるわけね。よし、待ってな。おーい、ルッツ。アメジストを練り込んだ魔除けのミサンガ持っておいで」
「あいよー! サイアおばあちゃん!」
「あ、あの……」
「おまちどおさま!」
まだまだ小さい犬の男の子が、私の前で背伸びをしてトレイを差し出した。
「サイアおばあちゃん! 俺の二足歩行良くなってきたでしょ?」
「なーに言っとるんじゃ、まだまださね。お嬢ちゃん、受け取りんさい」
「でも」
「いいのいいの」
杖で促され、私はそれを手に取った。
「お代はそうさね……出世払いにでもしておこうかね」
「それはだめです! 払い」
私の言葉を遮る様に、店主は言った。
「半獣属猫科目三毛族のサイアだ。こっちは半獣属犬科目狼族のルッツ」
「今はちっこいけど、もっと大きくなるもんね!」
サイアは私に微笑んだ。
「露店商をしながら各地を気ままに放浪しとるもんでね。また会うことがあるだろうさね」
「サイアおばあちゃんは何でもお見通しだよ!」
ルッツは私の足の回りを四足歩行でぐるぐると周回した。
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