9. 救世主

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『しかしまぁ、とんだ会社に就職したな。早く辞めろ』 「そのつもり」 『九条先生辺りに相談して間に入って貰えば?』 「いや、さすがにこれくらいは自分で何とかするよ」 ちゃんと調べずに決めた自分の責任だ。 これくらいは自分で処理する。 『…その藤木さん?は信用出来そうなわけ?』 「いい人っぽい」 『ホントかよ』 藤木さんはなぜかいい人のような気がする。 何の根拠もないけれど。 『お前あれだな。女運がマジでヤバイな』 「…そうかな」 『そうだろ。まともな女いねぇじゃねぇか』 「真白はまともだろ」 『いや、まぁ…わざわざそこは触れないようにしたのに、自ら触れてくるのかよ』 思わず笑った。 「大竹…」 『ん?』 「真白…元気かな?」 『知らねぇよ。あのヤンキーみたいなナースの姉ちゃんが側に居るだろうから大丈夫だろ』 「ヤンキー?…あぁ、優樹菜ちゃん?」 『知らねぇよ。お前さ、真白ちゃんのことより、自分の心配しろよ!』 大竹のおかげで随分気持ちは楽になった。 大竹が連絡してきた用事は、大竹に預けたローズマリーを大竹のお母さんが綺麗に剪定した報告だった。 その報告を聞いて、俺は電話を切った。 少し気分が落ち着いた。 とにかく、寮に戻って出て行けるように準備しようと思った。 立ち上がって駅へ戻る。 スマホで調べると、阪神電車で帰るよりJRの方が早そうだ。 JRの改札を探して辿り着くと、電子マネーにチャージしておこうと財布を取り出そうとした。 ん? パンツのポケットにあったはずの財布がない。 落とした!? 洒落にならない。 クレジットから免許証、ATMのカードも入っているし、今財布無くしたら一文無し。 それに、あの財布は…! 急いで来た道を戻る。 そんなに歩き回っていないから見つかるはずだ。 自販機でお茶を買ったとこまではあったわけだから…。 自販機からさっきの植え込みと、そこから改札口の前までの間。 焦る気持ちを落ち着かせて、探した。 植え込みの部分に戻ると、さっき俺が座ってた場所で大学生くらいのやんちゃそうな若者が盛り上がっていた。 まさかと思い、彼らの手元を見ると、俺の財布。 マジか…。 どう見てもみんなで仲良く山分けタイムで、交番に行こうって感じの盛り上がり方ではない。 だからって諦めるわけにはいかない。 喧嘩覚悟で声を掛けた。
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