11. 意見陳述

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「恭一郎、飯出来たで」 ノックされて、扉を開けながら吾郎さんが知らせてくれた。 九条先生と電話した後、ボーッとしていて、部屋の真ん中でスマホを持ったまま佇んでいた。 「おっ、電話中やったか!?悪い悪い」 慌てる吾郎さんに、 「あっ、いや…電話は終わりました…。東京の弁護士さんからで…」 俺が説明すると、吾郎さんはそれ以上何も聞かずに小さく頷いた。 「飯、食おうや」 「はい」 食事は何となくの当番制で作っていた。 お互い縛られないくらいのユルいルールだった。 リビングのテーブルで吾郎さんが作ってくれた焼き飯を二人で向かい合わせに座って食べる。 「旨いです」 「そうか?」 頬張りながら感想を言うと、吾郎さんは嬉しそうに笑った。 「足りひんかったら、餃子もあるで。冷凍やけど」 「食いたいっすけど、夕方予約入ってるんで止めときます」 「真面目やな」 「吾郎さんもですよ」 「マスクしてたらわからんやろ」 「いや、ニンニク嫌いな人だったらわかりますよ。アレは」 二人で焼き飯を頬張りながら笑う。 「そや、アンタ釣りはするんか?」 「釣りですか?ほとんどやったことないです」 「そうか。好きちゃうか?」 「いや、興味はあります」 俺の回答に嬉しそうにする吾郎さん。 「この週末の土曜。予約入ってへんから一緒に淡路島まで釣りに行かへんか?」 「おっ、いいですね」 「よっしゃ!行こや!」 吾郎さんとの生活は楽しい。 真白との生活とはまた別の感じ。 例えるなら…俺にはわからないけれど、親父(ちちおや)が居たらこんな感じなんだろうかと思うタイミングがよくあった。 俺は雇われていて、吾郎さんは俺の雇い主で、そこに金銭が発生しているから、そんな風に思って甘えてはいけないのだろうけど… 居心地が良かった。
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