11. 意見陳述

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――…… 「面白い友達やったなぁ」 店を閉めてマンションに戻る帰路、吾郎さんが呟くように言った。 「藤木さん?」 「そや。明るい男やった」 「ですね。ずっとあんな感じで、救われてます」 「ええ友達に出会ったなぁ」 そう言って、軽く肩を叩かれた。 「あれは、アンタのこと心配して様子見に来たんやろ」 それは、俺も思った。 藤木さんと池本さんには、吾郎さんのお店で働くことになった説明をして出た。 二人は心底心配してくれた。 “腕あるんやから、もっと他選んだらええやん!?” “なんでわざわざ余生楽しんでるじいさんのアシスタントやねん!?” そんな風に止められながらも、俺が吾郎さんの元で働きたくなった気持ちを話したら、送り出してくれた。 スマホの通知音。 俺は上着のポケットからスマホを取り出す。 開けて見ると、藤木さんからだった。 《仕事終わり、空いてたら飯でもどう?三宮ブラブラしてる~》 LINEにはそう来ていた。 「さっきの友達か?」 問い掛けられて、吾郎さんを見る。 「はい」 「飯でも誘ってきたか?」 お見通しのようだ。 「俺も久々にマスターとこで飲んで来るから、今日の夕食は別々にしよか?」 有難い申し出だ。 「すみません…」 「謝ることちゃうがな。俺も飲みに行くんやから」 吾郎さんはそう言って豪快に笑う。 バーの近くまで一緒に歩いて解散した。 俺は駅の方へ向かい、吾郎さんはマスターの居るバーへ。 三宮の駅前で藤木さんと合流し、 「オススメの店ある?」 と聞かれた。 オススメも何も、俺もまだここに来て日も浅い。 「カレー屋くらいしか行ってないから…」 と話すと、 「めっちゃカレー好き!!」 と結局、陽気な店員が居るカレー屋に行った。
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