11. 意見陳述

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********************************* この事件で私の人生は大きく変わりました。 描いていた未来が突然見えなくなり、黒く塗りつぶされた感覚です。 私には尊敬し、目指した人が居ました。 加害者もその1人でした。 10代の頃に出会い、仕事のノウハウ、技術、人との接し方、多くのことを加害者に教えて貰いました。 私は、加害者を尊敬し、信頼していました。 あの日、あの場所に行ったのは、加害者を信頼し、親身に私の相談にのってくれていると信じていたからです。 私にとっては、加害者は姉に近い存在だったかもしれません。 加害者が当日すすめてくれた酒も、加害者じゃなければ飲まなかった。 だからこそ、事件後、酔い潰れた自分を強く責め、自己嫌悪に陥り抜け出せなくなりました。 飲まされた薬は、現実と幻想の判断が出来なくなる恐ろしいものでした。 恐怖心だけは確かに残り、市販薬さえも飲めなくなりました。 自分の正常な意思や感覚を失くて受けた加害者の犯行は、私の尊厳も未来も築き上げた全てをも奪い去りました。 男だから逃げられたのでは? 男だから抵抗できたのでは? 世間が思う疑問は、私も同じように自分に何度も問い掛け、その度に苦しみました。 だけど、これだけは言える。 出来なかった。 だから絶望した。 自分に、絶望し、許せなかった。 この世の不条理を感じました。 男が被害を表にする難しさを痛感しています。 恋人が、夫が、兄が、弟が、息子が、 同じような被害に遭えば、わかるかもしれません。 私にも愛した人がいて、家族がいて、友達や同僚がいて、未来があった。 全てを失う覚悟で、加害者の罰を望み、立ち上がりました。 本当は、失いたくなかった。 それでも立ち上がったのは、絶望しかない中で、真実を証明したかったからです。 私は世間で噂されているような、被害者Aではありません。 社会で働き、そこで生き、恋人と平穏な未来を見ていた、普通の男です。 どこにでもいる、普通の人間でした。 失くした尊厳を取り戻したい。 私と、私を支えてくれた彼女の為に。 **********************************
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