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夕日が綺麗に沈んでいく。
それをじっと眺める。
“墨君、これは長く弁護士をやってきた勘だ。このままじゃ君はこの事件で未来まで奪われる。潰れてしまうよ”
さっき、九条先生に最後言われた言葉。
“裁判は精神的にもっと辛くなる。ちゃんと自身と向き合うんだ”
片膝立てて座り込んでいた膝の上でギュッと拳を握った。
それで何度も額を打ち付ける。
何度か打ち付けた後に、そのまま膝に顔を伏せた。
真白が大粒の涙をポロポロ溢しながら言った言葉…
“私を……この苦しみから解放して…”
あれは…
“恭ちゃん……この苦しみから抜け出して…”
そう言っていたんじゃないか?
“私を解放してください…っっ”
あれも…
“楽になって…元に戻って…闘って…”
って、そう言ってたんじゃないか?
ギュッと拳を握る。
膝から顔をゆっくりと上げる。
このままで、いいはずがない。
夕暮れの土手。
視線の先の原っぱに、たんぽぽの綿毛を見つける。
“飛んで行く様がかっこいい”
飛んで行く綿毛を見つめながら言った真白の言葉。
真っ直ぐ見つめた横顔が愛しかった。
パンツの後ろポケットからスマホを取り出す。
タップして画面を開き、アドレスから電話番号を引き出して電話を掛けた。
耳に当て、何度かの呼び出しコールで通話になる。
「…もしもし。すみません、診察の予約をお願いします」
前を向くよ。
真白…
真白が俺を解放したんだろ?
綿毛のようにかっこよくは飛べていないけれど、いつまでも茎にしがみついて残るわけにはいかない。
真白が吹き掛けてくれた息を無駄にはしないよ。
風に乗れるかわからないけれど、飛び立ってみるよ。
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