8496人が本棚に入れています
本棚に追加
足を骨折した辺りから3ヵ月、通帳記載していなかった。
纏まった金額を余分に入れていたものの、家賃に水道光熱費、通信料…全部引き落としされていて、収入がなければ減る一方。
俺は現状把握する為、久々に銀行に出掛けた。
ATMの機械の前で、通帳記載中の印字音を聞いていた。
長い。
流石にこの通帳の底は見えているはずだ。
仕事がない今、定期を1つ解約するしかない。
真白との新生活の為に置いていた金。
賞の賞金やボーナスを使わずに置いていた。
真白と別れた今、置いておく必要のない金だ。
ATMから通帳が出てきた。
それを取り、残高を見て驚く。
底が見えていると思っていた通帳の残高がおかしい。
俺はATMから離れてもう一度通帳を確認する。
やっぱり残高がおかしい。
残高数万円と予想していたのに、
表示金額は 2,038,216円。
200万ほどおかしい。
意味がわからず、印字した通帳を一行一行確認する。
どこからの200万だ?
カブシキガイシャ イデアル
「イデアル?」
3ヶ月前にイデアルから200万円の振込みがされていた。
イデアルは俺が勤めていたヘアサロンの会社。
麗美さんの兄に当たる、新城代表が経営している。
この事件で俺は辞表を出し退職している。
「…退職金?」
退職金ってこんなに貰えるものなのか?
相場をスマホで調べる。
色々見て、相場より高いように思う。
17歳からイデアルにお世話になったものの数年はアルバイトだった。
こんなに退職金を貰えるほどの勤続年数じゃない。
業種によっては退職金の値段は様々のようでよくわからない。
総務に電話して聞くか…。
いや、麗美さんのことが表沙汰になった今、電話しにくい…。
スマホのアドレスをスクロールして、新城代表の電話番号を引き出す。
「……直接電話するのもな」
気が重い。
通帳とにらめっこ。
何なんだこの金額は…。
悩みに悩んで、俺は新城代表に電話した。
はじめは、俺からの電話に驚き戸惑っていたけれど、少し話がしたいと言われた。
こんなことになったけれど、新城代表に世話になったのは事実だし、断る理由はなかった。
俺は新城代表と会う約束をした。
最初のコメントを投稿しよう!