3. 傷

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足を骨折した辺りから3ヵ月、通帳記載していなかった。 纏まった金額を余分に入れていたものの、家賃に水道光熱費、通信料…全部引き落としされていて、収入がなければ減る一方。 俺は現状把握する為、久々に銀行に出掛けた。 ATMの機械の前で、通帳記載中の印字音を聞いていた。 長い。 流石にこの通帳の底は見えているはずだ。 仕事がない今、定期を1つ解約するしかない。 真白との新生活の為に置いていた金。 賞の賞金やボーナスを使わずに置いていた。 真白と別れた今、置いておく必要のない金だ。 ATMから通帳が出てきた。 それを取り、残高を見て驚く。 底が見えていると思っていた通帳の残高がおかしい。 俺はATMから離れてもう一度通帳を確認する。 やっぱり残高がおかしい。 残高数万円と予想していたのに、 表示金額は 2,038,216円。 200万ほどおかしい。 意味がわからず、印字した通帳を一行一行確認する。 どこからの200万だ? カブシキガイシャ イデアル 「イデアル?」 3ヶ月前にイデアルから200万円の振込みがされていた。 イデアルは俺が勤めていたヘアサロンの会社。 麗美さんの兄に当たる、新城代表が経営している。 この事件で俺は辞表を出し退職している。 「…退職金?」 退職金ってこんなに貰えるものなのか? 相場をスマホで調べる。 色々見て、相場より高いように思う。 17歳からイデアルにお世話になったものの数年はアルバイトだった。 こんなに退職金を貰えるほどの勤続年数じゃない。 業種によっては退職金の値段は様々のようでよくわからない。 総務に電話して聞くか…。 いや、麗美さんのことが表沙汰になった今、電話しにくい…。 スマホのアドレスをスクロールして、新城代表の電話番号を引き出す。 「……直接電話するのもな」 気が重い。 通帳とにらめっこ。 何なんだこの金額は…。 悩みに悩んで、俺は新城代表に電話した。 はじめは、俺からの電話に驚き戸惑っていたけれど、少し話がしたいと言われた。 こんなことになったけれど、新城代表に世話になったのは事実だし、断る理由はなかった。 俺は新城代表と会う約束をした。
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