23. 芍薬の花

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次の週、真白は晴れて弁護士となった。 それからの生活は、今までゆっくり流れていた時間が一転してスピードが増した。 俺は藤木夫妻にBlanc purの今後の構想を話した。 「古泉に店任せるんかっ!?ヤバないか!?」 とはじめこそ驚いた藤木ではあったけれど、Blanc purとの差別化をはかり、ブランドを確立する説明を丁寧にした。 千穂さんは最後まで話を聞いて、 「ボスに賛同する」 と言ってくれた。 「ほんなら、俺は今まで以上にここで頑張ったらいいんやな!?」 と、藤木も賛成してくれた。 古泉への打診は慎重に段階を踏んで行ったものの、彼は“yes”とは言わなかった。 「そんなん、無理ですッ!俺、そんな器ちゃうしっ!」 大パニックだった。 それでも、俺は店のオープンを決めて準備をしつつ、古泉を説得した。 「責任はオーナーである俺だから。店が成功するように知恵を貸して欲しい」 店造りから古泉に参加させて、彼の意見を取り入れながら話をすすめた。 店のオープン日が見えてくると、古泉はその話を受けてくれた。 10代~20代前半の若者と子育て世代のお母さんをターゲットにした店は“Petit@b.p.”と名付けた。 店内は出来るだけコストを抑えた。 Blanc purは何から何までこだわり抜き、内装もかなりの金額を掛けたけど、千穂さんと美大生の協力を得て低コストでコーディネートして貰った。 PetitはSNSに気軽に載せて貰えるように、デザイン重視、また簡単に内装を流行りのものにチェンジ出来るようした。 Blanc purとPetitの差別化をはかったことで、Blanc purのお客様が減ることはなかったし、PetitはPetitでターゲット層にじんわりと馴染んでいった。 俺は2つの店を見ながら、Blanc purとPetitの両方を行き来している。 真白との生活はあのコンクリート打ちっぱなしマンション1ルームから引っ越した。 三宮の3LDKの新築マンション。 やっと俺達は広いお風呂に二人で入れるようになった。 とは言え、俺も真白も忙しくて、同じ時間に風呂に入れるのは月に数回。 それでもやっぱり一緒に入ると、向かい合わせではなく引っ付いて同じ方向を向いて入ってしまう。 それがお互いしっくりくるみたいだ。
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