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真白からの別れを全く想定していなかったわけではない。
いつか俺は、真白に、
“もうダメだと思ったら、俺を棄てろ”
と話した。
それは何の強がりでも、
何かの伏線でもない。
真白の為の布石だった。
それが、実行されただけ。
真白が俺と居て幸せになれるわけない。
これが正解だ。
正解だよ、真白。
正解だ…。
「…おい…おいっ!恭一郎っっ!!」
誰かに呼ばれて目を開けた。
暗闇の中、ぼんやり人のシルエット。
真白じゃない。
もう一度目を閉じようとすると、頬に強い衝撃を感じた。
「しっかりしろッッ!!!」
グッと誰かに胸ぐらを掴まれて、上半身が起こされた。
薄明かりの中、その声の主を見る。
大竹優(おおたけ まさる)だと認識した。
「…おぉ…たけ?」
奴は俺の腐れ縁。
地元の友人で、ずっとつるんできた。
なぜ大竹がここに?
「お前、何があった!?」
「…ん」
「丸一日連絡つかねぇから来てみたら、インターフォンにも反応ないし、ダメ元でドアノブ引いたら開いたから…」
心配して飛んできてくれた様子。
大竹はそんなキャラじゃない。
俺が苦しむのを笑えるやつ。
小学校の時電子レンジで温めた卵が口の中で爆発した時も、
中学の時コーラを鼻から出して苦しんだ時も、
高校の時先輩とケンカしてボコられた時も、
こいつは俺の苦痛に歪む表情を見て笑っていた。
こいつが俺に手を差しのべる時は、相当ヤバイ。
俺、相当ヤバイのか?
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