1. 失ったあの日

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真白からの別れを全く想定していなかったわけではない。 いつか俺は、真白に、 “もうダメだと思ったら、俺を棄てろ” と話した。 それは何の強がりでも、 何かの伏線でもない。 真白の為の布石だった。 それが、実行されただけ。 真白が俺と居て幸せになれるわけない。 これが正解だ。 正解だよ、真白。 正解だ…。 「…おい…おいっ!恭一郎っっ!!」 誰かに呼ばれて目を開けた。 暗闇の中、ぼんやり人のシルエット。 真白じゃない。 もう一度目を閉じようとすると、頬に強い衝撃を感じた。 「しっかりしろッッ!!!」 グッと誰かに胸ぐらを掴まれて、上半身が起こされた。 薄明かりの中、その声の主を見る。 大竹優(おおたけ まさる)だと認識した。 「…おぉ…たけ?」 奴は俺の腐れ縁。 地元の友人で、ずっとつるんできた。 なぜ大竹がここに? 「お前、何があった!?」 「…ん」 「丸一日連絡つかねぇから来てみたら、インターフォンにも反応ないし、ダメ元でドアノブ引いたら開いたから…」 心配して飛んできてくれた様子。 大竹はそんなキャラじゃない。 俺が苦しむのを笑えるやつ。 小学校の時電子レンジで温めた卵が口の中で爆発した時も、 中学の時コーラを鼻から出して苦しんだ時も、 高校の時先輩とケンカしてボコられた時も、 こいつは俺の苦痛に歪む表情を見て笑っていた。 こいつが俺に手を差しのべる時は、相当ヤバイ。 俺、相当ヤバイのか?
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