4. エール

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会計を終え、病院の正面玄関を出ると車寄せに大竹がバイクと共に待っていた。 「そのバイク、まだ現役かよ」 思わず笑った。 昔、俺が乗っていたバイクだ。 俺はバイトの先輩に2年しか乗っていないバイクを譲って貰い、それから約5年乗って、大竹に譲った。 真白を何度も後ろに乗せたバイクだ。 「急いで出たから、バイクとばしてきたんだ。これしかないけど、どうする?」 大竹に問われる。 後ろに乗れる心境なのかと尋ねているようだ。 「バカ、乗れるよ。メット貸して」 大竹からヘルメットを受け取り装着。 大竹にもヘルメットを被ってバイクにまたがるように促す。 大竹は俺を心配しながらも、ヘルメットを装着してバイクにまたがった。 「なんか食いに行くか」 大竹は後ろにまたがった俺にそう言って、バイクを発進させた。 後ろに乗ると、見える世界がまた違う。 真白が見ていた世界を垣間見て、真白を思った。 大竹が連れてってくれたのは、ラーメン屋。 右手の使えない俺への配慮は一切なし。 左手で苦戦する俺を見て、大竹は笑った。 通常運転の大竹。 先に食べ終わった大竹は、対面で食べにくくしながら食べる俺を見て、満足そうに腹を叩いた。 「早く食えよ。のびるぞ」 「お前、ドSだな」 俺の嫌味にニヤニヤ笑う。 「ハサミ握る手だろ。気を付けろよ」 「うっせぇ」 「仕事の再開が遅れるじゃん」 それは俺も思っていた。 予想外のトラブルだ。 「お前、マジで厄除け行け」 大竹に言われたからではないけれど、その必要性を感じてきた。 「俺、来週仕事で関西行くんだけど」 「関西?」 「そう。兵庫・京都・奈良」 「旅行?」 「ちげぇよ。仕事」 「何しに?」 「酒蔵巡り」 「旅行だろ」 「違う」 大竹はそう言ってから、前のめりになる。 「お前も気晴らしに行くか?」 そう聞いてきた。 仕事じゃねぇじゃん。
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