4. エール

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奈良に到着して、ご当地ラーメンにありつけたのは夕方だった。 昼間はサービスエリアで済ませていた。 「お前と居たら野菜不足に陥る」 対面の席でラーメンを食べながら、クレームを言ってみた。 「白菜とニラが入ってる」 そう言ってラーメンをすする大竹。 いや、入ってるけど。 「食べにくいんだよ、左手でラーメンは!」 匙を投げるように割り箸をテーブルに置いた。 「諦めんな。食えよ」 大竹の言葉を無視して、水を飲む。 「兄ちゃん食べにくいやろ?フォーク出したって~」 突然話し掛けてきて、店員にフォークを頼んでくれたのは隣の席のおじさんだった。 店員がフォークを持ってきてくれた。 「あ、ありがとうございます」 店員にも横のおじさんにもお礼を言う。 「アンタらここらの若者ちゃうなぁ?」 「東京から来たんです」 「観光か?」 それを答えようとすると、 「コイツは観光。俺は仕事です」 となぜか大竹がそこは正確に横槍で伝えてきた。 「そうか。まぁ、どっちにしても何もないとこやけど、ゆっくりしていきや」 おじさんは、爪楊枝をくわえて軽く手を上げて去っていった。 「めっちゃ親切」 借りたフォークで食べると食べやすい。 この発想はなかった。 一気に食べるスピードが上がる。 親切な奈良のおじさんに感謝した。 その日はビジネスホテルのような民宿に泊まり、翌日朝一で大竹オススメの寺へ足を運んだ。 入り口の階段が長くて、暫く運動していない俺にはキツかったが、大竹はヒョイヒョイ昇っていく。 「お前、労りの気持ちはないのか?」 「ない」 「神様が見てるぞ!」 「ここは寺だ。それを言うならお釈迦様だろ。バカか」 あぁ言えばこう言う。 その腹立ちを階段を昇るエネルギーに変える。 寺に到着したら、息が上がっていた。 マジで運動不足。 これはヤバい。 いくら朝一とは言え、真夏。 Tシャツに汗が滲む。 「ほれ、祈祷申し込みしてこい」 「手合わせるだけでいいよ」 「アホか、行ってこい」 足蹴りされて、祈祷受付をした。 山の上にある寺。 そこでしっかりと祈祷をして貰った。 多分、人生ではじめての体験。 俺の厄払いはいいから、真白の厄を何とかしてくれと祈りながら祈祷を受けていた。 でも、そもそも俺が厄だったなら、俺と離れた真白は、もう大丈夫なのかもしれない。 そんな風に思った。
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