5. 君の真意を知る

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『墨さん、天宮が――』 それは、真白が原因不明の発熱に倒れた知らせだった。 真白の親友で幼馴染みの藤川優樹菜ちゃんが看護師として勤める病院に入院していると言う。 「原因不明って何だよ!?」 『わかんねぇよ。今朝、天宮のお母さんが体調不良の悪化に気付いて近所の診療所に受診させたんだけど、熱高いし、酸素濃度が異様に低いとか何とかで藤川の病院に運ばれたんだ』 「酸素濃度?」 そんなこと今までなったことはない。 「それで!?それが低いとどうなるんだよ!?」 俺の様子に、大竹もこちらを見ていた。 『わかんない!でも意識ないし!』 「意識がない!?」 真白に持病はない。 健康体で育ったはずだ。 『会いに来てやってくれよ…!墨さんッ』 矢沢がそう叫んだ。 会わない方がいい。 それはわかっているのに身体が勝手に動く。 「大竹!悪いッ、横浜の総合病院まで送ってくれないか?」 「どした?」 「真白が、倒れた。頼む!連れてってくれ」 必死に懇願する俺を運転席で大竹は真っ直ぐ見る。 返事を待たないまま助手席に乗り込む。 「頼むッ」 「行かない方がいい」 大竹はハンドルから手を離して腕を組む。 「はぁ?」 「お前が行ってどうこうなるわけじゃない。総合病院に居るんだろ?あそこは腕もいい。大丈夫だ」 大竹の言葉に眉間にシワが寄る。 俺は助手席から降りる。 大竹も降りてきて、駅へ向かおうとする俺の腕を掴んだ。 「離せッ!」 「行くなっ!!」 「煩いっ!離せよっ!」 声を荒げる。 振りほどこうにも振りほどけない。 「彼女がどんな想いでお前から離れたかわかったんだろッ!?」 大竹も声を荒げる。 俺はその言葉に振り払おうとする手を止める。 「今会って、辛い想いをさせてどうするッ!?」 「……!」 「離れるって決めたんだろ!?なら、中途半端なことはすんなっ!!」 頭の中で色んな感情がめぐる。 大竹の言葉も理解できた。 だけど… “意識ないし!” 電話の向こうの矢沢も、パニックだった。 「大竹…」 「うん?」 「放っておけない。もしものことがあったら、俺はもう生きていけない」 俺の言葉に、大竹の手がゆるむ。 大竹は唇を噛みながら頭を掻き、 「あぁ~!もうわかったよ!乗れっ!」 叫んだ。 「連れてってやる!でも、俺も行く」 大竹はそう宣言した。
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