5. 君の真意を知る

5/12
前へ
/300ページ
次へ
「真白に、俺が事実を知ったことは伏せてくれ」 「…えっ?」 「俺が今日ここに来たことも、俺が真白の真意を知ったのも言わないでくれ」 「…でも」 困惑する優樹菜ちゃん。 後ろから大竹や矢沢もやって来ていた。 「嘘をつくんじゃない。話さないだけだ」 俺の言葉を聞いて、暫く考える優樹菜ちゃん。 「…墨さん、なんで?」 矢沢に問い掛けられる。 「真白は優しいから…。俺が真意を知ったと知れば、また苦しめることになる。自分を責めかねない」 そう話すと、優樹菜ちゃんは理解したように小さく何度も頷いた。 「お願い出来る?優樹菜ちゃん」 俺の問い掛けに、 「…はい」 彼女は返事をし、頷いて答えた。 「…ありがとう」 お礼を言った。 真白には、真白のことを心底心配して守ってくれる友達がいる。 大丈夫だと、自分に言い聞かせるように俺も頷いた。 「帰るよ…」 俺はそう告げ、大竹を見た。 大竹はポケットから車のキーを出す。 自分で大竹に寄り、来た廊下を戻ろうとする。 「恭ちゃん!」 優樹菜ちゃんに呼ばれて、俺は振り返る。 彼女は、俺を見て、少し迷いながらも、俺に駆け寄る。 「…真白、今、薬で眠ってます」 教えてくれた。 「そう…。眠れてるならよかった…」 「…熱も高いし、すぐには起きないと思います」 相当辛そうだ…。 代わってやりたい。 「一目だけ、会って行きますか?」 グッと俺を見上げて、優樹菜ちゃんは問い掛けてくれた。 会わない方がいい。 一目でも見てしまえば、気持ちが溢れるだろうから。 このまま帰った方がいいのはわかってる。 だけど、 それでも… 「…いいの?」 会えるチャンスを、逃したくはなかった。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8494人が本棚に入れています
本棚に追加