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「そんなこと言ってたら…アンタいつまでも幸せになれないよ?」
「……」
「どこかで気持ちの折り合いをつけないと。真白ちゃんがいいって言ってるんだから、そこは甘えて!相手には賠償金とか慰謝料とかたっぷり請求してやればいいんだよ」
げんなりする。
「金なんかで解決出来ることじゃない」
母親と話していると、自分の気持ちとの差があまりにも大きくて、話すこと自体を諦めたくなる。
「恭一郎、それは綺麗事だよ!結局、形にするってなったらお金しかないんだよ!」
「それと、真白の気持ちは別だろ!?」
頭が痛くなる。
「知らないよっ!そこはあの子が折り合いをつけるとこでしょ!?」
「それをさせたくないんだよ!!」
胸の奥で渦巻くような気分の悪さ。
「何で!?一緒に居たいなら我慢して貰うしかないだろ!?」
「それが辛いんだ!!」
「考えすぎよ!相手のことばかり考えてたって幸せになんかならないよ!?」
「真白を苦しめて、幸せになんかなれるわけない」
「なんでそこまで!?」
「誰よりも一番大事だからだ!」
大きな声を上げて言った。
母親は眉間にシワを寄せる。
「…自分よりも?」
側でそう問いかけられた。
母親からのアルコールの匂いが追い討ちをかける。
「もちろん…自分よりも…」
一気に込み上げてきた吐き気を抑えながら、伝える。
だけど、上がってくる感覚は止められなくて、俺は店舗内にあるトイレに駆け込んだ。
そしてその便器に嘔吐する。
「恭一郎ッ!?」
母親が驚いて駆け寄ってくる。
狭い空間で側に寄られると、母親が側で息をすると、アルコール臭を発する。
「放っておい…てくれッ…うっ」
次々に込み上げてくる吐き気が止まらない。
「恭一郎っ!!急にどうしたの!?」
俺を揺さぶる母親。
匂いと、その揺れが我慢できなくて、母親を振り払う。
酒が抜けてなくて酔っているからなのか、母親は尻餅をつくように、トイレの外に出た。
止まらない吐き気とめまいのような感覚。
それを止めたくて、何度も目を閉じて頭を振るう。
ガサガサとトイレの外から音がする。
「兄貴?」
俺を呼ぶ声。
「おいっ!!何!?大丈夫かッ!?」
俺の背に手が当てられる。
「めっちゃ吐いてんじゃん!食中毒!?」
チラッと見上げると、慶次郎だった。
「おい、そんなとこでへばってないで救急車呼べよっ!!」
慶次郎が母親にそう叫ぶ。
俺は慶次郎の服の裾を掴んだ。
「救急車は呼ぶな…っ…大竹っ…大竹に連絡っ…っ」
必死で伝えた。
「何!?大竹さん!?あの人医者じゃねぇぞ!?酒屋だろ!?」
慶次郎の反応に、いいからと首を縦に振る。
「わかったよ!昔から番号変わってないよな?」
俺を見て、慶次郎はスマホを出した。
俺はもう吐くものもないのに、込み上げてくる嘔吐の感覚が止まらなかった。
「…あっ、もしもし!?大竹さん!?慶次郎です。兄貴が―」
慶次郎の連絡で、大竹が来てくれたのは、その直ぐ後だった。
ヘロヘロになった俺を大竹と慶次郎が、救いだしてくれた。
また、自分の異常を再確認した。
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