7. 光の射す方へ

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暗闇で見つけた一筋の光。 ずっとさ迷っていた。 やっと光を見つけた気がした。 それが正解か不正解か、ゴールかスタートかもわからない。 だけど、何もない暗闇をさ迷うよりはずっといい。 それが、例えどんなに微々たるものでも、真白の傷を癒すことになるなら、俺は立ち上がれる気がするんだ。 公判の参加を決め、九条先生に伝えた。 PTSDの診断書の準備や、遮蔽を入れての参加またはテレビモニターでの参加などの提案があった。 俺の気持ちを理解し、支えてくれる九条先生には感謝しかない。 九条先生の帰りを、ハイツの外まで見送る。 「じゃぁ、次は来月の頭くらいに…。公判の前で申し訳ないけど、準備はちゃんとしておいた方がいいから」 「はい。宜しくお願いします」 俺は頭を下げる。 「無理しないようにね。体調にも気を付けて…」 「ありがとうございます」 九条先生は優しく頷いた。 真白の様子を聞いてもいいだろうか…。 一瞬、迷った。 だけど、さっき醜態を見せた。 今さら取り繕ったって仕方ない。 「九条先生…」 「うん?…天宮さんの様子?」 心を読まれてしまった。 俺は少し照れ臭いながらも頷いた。 「体調もよくなって、仕事を頑張ってくれているよ」 そう聞いて、少しホッとした。 「ただ、仕事と家の往復で、息抜きもしてないように思う」 九条先生は包み隠さず話してくれた。 「だから、近々、焼き肉かすき焼きかしゃぶしゃぶに誘おうと思ってるよ」 そう言ってニコッと笑った九条先生。 気に掛けてくれていることが有難い。 「心配しないで。ちゃんと見守ってるから」 九条先生の言葉に頷いた。 真白には、家族も、友達も、九条先生や仕事仲間も居る。 きっと、大丈夫だ…。 「ちゃんと、闘いに専念します」 そう言うと、九条先生は頷いて俺の肩を軽く叩いてくれた。 「じゃぁ」 立ち去ろうとする九条先生に、 「しゃぶしゃぶがいいと思います」 と言った。 「うん?」 「真白は焼き肉やすき焼きより、しゃぶしゃぶが好きです」 「あぁ!あっさりが好きか!」 「いや、でも、ポン酢じゃなくゴマだれ派です」 そう教えると、 「女心は複雑だね」 と笑った。 「聞けてよかったよ。誘いやすい」 九条先生はそう言って、去って行った。
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