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『…このまま一緒にいたら、共倒れになる。いつか、傷付け合うことになる』
真白の手は酷く冷たかった。
真っ直ぐに見上げて伝える彼女の言葉。
『ごめんね。ずっと側にいるって言ったのに…』
予測していなかった事態に頭が着いていかない。
『真白?』
『裁判はしっかり九条先生に入って貰うから…安心して―』
『真白、ちょっと待って!』
とにかく彼女を止めたくて真白の両肩を掴んだ。
『なんで突然!?』
動揺は隠せない。
『…突然じゃないよ』
真白が震えた声で呟く。
真っ直ぐに彼女の視線に降りて、目を合わせた。
『…突然じゃないの。ずっと考えてた』
これは、何か勘違いからか?
何か間違えたか?
何か…何か…
『…俺が…PTSDに掛かったり、自暴自棄になったり、真白に相談なしに行動したりしたから?』
『違うよ。そうじゃない…』
『じゃぁ、なんで!?』
真っ直ぐ見つめた真白の目は真っ赤で、
今にも大粒の涙が溢れだしそうだった。
彼女の涙は、11月からずっと見てきた。
俺が傷付けて、ボロボロにした。
『一緒にいても、辛いだけだから…』
苦しそうに発する言葉。
その苦しそうな表情に、俺も苦しくて仕方がない。
『お互い幸せになれないよ』
涙を堪えて言う真白。
真っ直ぐ合っていた目を、彼女はそらして右下を向いた。
『…一緒に居るのが辛いの。苦しいの…』
真白の言葉。
『私を……この苦しみから解放して…』
そして彼女は顔を上げる。
『私を解放してください…っっ』
ポロポロと大粒の涙が彼女の頬を伝った。
目をそらせなかった。
そらしてはいけないと思った。
ずっと、一生一緒に居たいと想った、たった一人の女性。
ずっと一緒に生きてきたかった。
それを願っていたんだ。
取り返しのつかなくなった俺の人生に、真白の幸せがあるのかもわからずに、さ迷っていた。
だけど、真白を失う覚悟なんか出来ていなくて、心が凍り付く。
彼女の幸せの為に、そう自分に言い聞かせる。
身体を引き裂かれるような気持ちだった。
それくらい愛してるんだ…
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