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幕間 悪魔の囁きと謎の悪夢
急に視界が明るくなる。窓の外からは夕日が輝いている。陽炎がゆらゆらと揺れている。
辺りを見回す。長机と椅子、教壇と黒板。ここは大学の大教室だ。俺は教壇側から見て一番前の席に座っていた。
(何故、俺はこんな所に居るんだ?)
この教室は普段、俺は使わない。俺の在籍する社会学部の福祉コースの講義が行われる校舎は、この大教室のある校舎から徒歩三十分くらいかかる場所にある。こんな場所に俺が来る理由が無い。
(……いや、待てよ)
ふと、俺は思い出す。確か一度だけ、この場所に来たような記憶がある。授業ではない。サークルの用事でもない。確か、あれは……。
ガチャ キィ
大教室の前方、黒板のすぐ左横にある扉が開き、誰かが入ってくる。逆光で顔は見えない。陽の光が眩しい。
「やぁ、遅くなってすまないね」
ようやく顔が見えてきた。少し白髪交じりの初老の男性。目は少し垂れているが、彫りの深い顔立ち。濃紺のスーツに淡い桃色でチェック柄のネクタイ。ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「呼び出したのはこちらなのに本当に申し訳ない。会議があったものでね」
温厚そうな笑みを浮かべ、片手を軽く上げて謝罪のジェスチャーをする。
「いえ、大丈夫です」
(……!?)
驚いた。俺の口が勝手に動いたのだから。俺の口は、意思と無関係に喋り続ける。
「それで教授。僕に是非とも聞いて欲しい話というのは?」
俺に教授と呼ばれた目の前の人物は、深くゆっくりと頷いた。
「あぁ、それはね……」
その先は聞くことができなかった。
唐突な眩暈が俺を襲ったからだ。
―――急に視界は暗転し、そして、俺は本当に目を覚ました。
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