『徳川鳥獣壱拾弐武衆』

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『徳川鳥獣壱拾弐武衆』

〇江戸城内 小間 (夜)    1695年(元禄8年)    12人の男女が車座になり    談合をする    部屋の4隅と    円の中心に蝋燭が立つ    それぞれの前には    各々が愛用する武器と脇差し一本    脇差しは    刃がやや抜き身の状態で    置かれている 語り「『徳川鳥獣壱拾弐武衆』 かの諸法令「生類憐れみの令」配布中に 結成された、 徳川綱吉直轄の諜報部隊である」    天井に影絵が映る    中央に徳川の三つ葉葵    外周を十二支の絵が    方位陣の順に並び囲う 語り「彼らは個々に 常人離れした身体能力と、 動物達と心を通わせ 会話をする事が出来る 特異な能力を持つ」 〇山奥    人里離れた獣道    年老いた馬を放し    立ち去ろうとする農民    そこに都合良く現れる役人    農民を捕らえ連行する    農民が見上げると    そこには猿が数匹    猿が農民をずっと監視していた 〇見世物小屋    芝居の演目で    前場の一連のやりとりを行う演者    評判は上々    お捻りも飛んでくる 語り「もっとも、 その姿を実際に見た者は殆どおらず。 市民の生活を 何処からともなく監視している。 時の将軍綱吉の悪政を皮肉する 意味を込めて生まれた、 架空の存在として 今日も世間を一人歩きしている」
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