217人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
年下男子が生意気です。再会
男は苦手だ。
否、嫌いだと言っても過言ではない。
「私達もう28よ?周りはバッタバタと結婚していってるのに、こんな良い女に彼氏もいないだなんてなんなのっ!」
幼なじみの紗奈は最近会えばこの手の話ばかりする。
私はいいと何度も断っているのに、合コンや結婚相談所とかをしつこく誘って来る。
今日は歯が少し痛むので歯医者の予約を入れていたのに、電話で紗奈から助けてくれと言われて急いで駆けつけてみれば街コンだった。
街コンとは街ぐるみで行われる大型の合コンイベントである。この街コンは女性陣は食べ物が食べ放題なせいかやたらと女子率が高い。
飲んだくれてくだを巻きまくるアラサー女に話しかけてくる男などいるわけもなく……
「紗奈。男なんて無理に探すもんじゃないでしょ?」
「バカね!良い男がその辺に転がってるとでも思ってんの?!掴み取らなきゃババ掴むわよっ!!」
その掴み取った男にこないだ二股されたあげくに捨てられたんでしょーがと、心の中で毒づいてみる。
一人でだって生きていけるのに、男に左右される人生なんて真っ平御免だ。
ブーブー言いながら酒を飲みまくる紗奈を尻目に、電子手帳を取り出してスケジュールをチェックした。
来週は専務に付き添って海外出張に行く予定が入っている。
参ったなあ……次の歯医者の予約、いつ入れよう。
私、一条 律子28歳。
職業、一般企業の役員秘書。
生真面目、堅実、公明正大、実直、律儀……
全部私を表す言葉だ。
両親共に教師である家に産まれた私はとても厳しく育てられた。
成績は常にトップを強いられ、門限も厳しく、見るテレビでさえ制限された。
周りからはよくそんな生活を我慢出来るねと言われたが、私はそのことを苦に思ったことはない。
私にとって厳格に生きるということは当たり前のことだったからだ。
だから人からどう思われようが言われようが気にはならない。
そう……
気になんかならないのに………
「あんたみたいな女、一番大切に思ってくれる男なんていないから。」
時折、不意に思い出すこの言葉。
なぜあんな年下の生意気なヤツの言った言葉がこんなにも胸に突き刺さったままなのだろうか。
もう…10年も経つというのに───────
「……律子さあ、いつまで過去を引きづってんの?」
ギックぅ!!
「なんのこと?思い当たらない。」
「はいはい。私にはバレバレだからね?本当は男にだって興味津々なんでしょ?」
「ちょっ、紗奈!なに言って……!」
「だって律子ってむっつりスケベじゃん。すいませ〜ん、日本酒追加で〜っ。」
なによそれっ……
人を男好きみたいに言わないでよ!
私は別に……アイツから好かれたいだなんて微塵も思ってなかったんだから!!
「綺麗なお姉さ〜ん。俺らと一緒に飲まない?」
いかにもチャラ男な年下の二人組が話しかけてきた。
なんてタイミングなの……
この女慣れしてる生意気そうな雰囲気。どうしたってアイツと被る………
紗奈がいいよいいよ〜と言って片方の男子に抱きついた。
「紗奈っ止めなさいって、はしたない!」
「まあまあ、お姉さんは僕と一緒に飲もう?」
気安く肩に触れられて、反射的に顔が赤く染まる。
私は重度の赤面症だ。
異性に対してだけ症状が強く出る。
このせいで今までどれだけ嫌な思いをしてきたか……
誤解されないように顔を髪で隠しながら下を向いた。
「このコ律子っていうんだけど堅くってさあ。軽く一発ヤってくんない?未だに過去に縛られてて処女なのよね〜。」
「ちょっと紗奈なんてことをっ!!」
マジで〜?とか言いながら二人がジロジロとからかうように見てきた。
全身がカァっと熱くなる……
とてもじゃないけど耐えられない!!
「紗奈!帰るよ!!」
「ええ〜なんでよ律子お。4Pしようよ4P。」
「シャ──ラップ!!」
べろんべろんに酔った紗奈を引きづりながら帰った。
今度は呼ばれたって二度と来てやんないっ!
最初のコメントを投稿しよう!