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テレビでは国内事件のニュースが流れている。
『男女二名がマンションから転落しました。男性は持っていた身分証より、大学生の白夜世緒さんと見られています。女性の身元は不明。警察は、連絡の取れない部屋の持ち主が、何らかの事情を知っているとみて捜しています』
コイトは、家でたまたまそれを耳にした。
「トキオ!」
「何かあったの?」
認知症の祖母は、ニュースを聞いても理解できない。驚くコイトを心配している。
「何でもない。そうだ。天気がいいから散歩に行く?」
コイトは、祖母に心配かけまいとわざと明るく振る舞ったが、体の震えを止めることはできない。
掃除中の母に事情を話して祖母を任せると、警察に向かった。
そこで、一命を取り留めたトキオと再会。会話もできたので安心した。
「あんた、無茶して。なんで転落したの? 痴話げんか?」
「もう一人の女は?」
トキオは質問に答えずにリスの状況を聞いた。
「一緒に落ちた女の人は、いつの間にか病院を抜け出して行方不明だって」
「そうか……」
トキオは残念そうにため息を吐くと、ベッドに深く身を沈めた。
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