愛人 ― 思い出の備忘録 ―

Episode 2

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記録2：2018年6月1日（金）：スペイン遠征7日目

　いよいよ映画の撮影が始まった。今回の映画の舞台となるスペインにやって来て、こちらでの撮影期間3週間のうち1週間が経過した。撮影はかなり順調に進んでいて、俺自身も我ながら快調な滑り出しを見せている。

　…という身の上の自慢はさておき、今日も忘れたくないと思えるような出来事があったから、少し久しぶりに備忘録をつけようと思う。

　撮影期間中にアユちゃんと色々話しているうちに、俺たちには様々な共通点があることが分かったんだ。

　80年代のロック音楽が好きなこと、お酒が好きなこと、好きなおつまみが揚げ出し豆腐やキムチ、イカの塩辛などおじさん臭い食べ物だったこと、読書が好きでお気に入りの作家まで同じなこと、機械の操作が苦手なこと（さすがにスマートフォンを使いこなせないというのはかなり引かれてしまったが）…。

　俺たちは出会ってから今日までほとんど毎日一緒に過ごしていた。撮影の合間に疲れている時には変な顔をして見せ合ったり、時には寝顔の写真を撮り合ったりして…（笑）とにかく、必ず互いを労い、励まし合っている。

　俺は彼女の無邪気さに沢山救われているし、彼女の存在が日々俺の心を満タンに満たしてくれている。こんなに幸せな現場、今までにあっただろうか。

　俺たちは明日の撮影が終わったら、サングリアというスペインの美味しい果実酒を二人で飲みに行こうと約束をした。勿論俺から誘った。撮影を夕方で終わらせようと計画を立ててくれた実和監督には感謝しないとな。

　明日は何を着ていこうか…。そう悩むのが今はとても幸せだ。

　…だが、日本に一人残した妻を思うと、かなり罪深くも感じる。

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