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「お前…どうしてそれを…!!」
「松川と付き合ってるって噂が立つようになってから、アユちゃんの様子がずっと変だったんだよ…何があったのかは知らない。でも彼女を傷つけるような真似はやめてくれないか」
なるべく松川の気分を逆撫でしてしまわないよう慎重に言葉を選んだ。
…筈だったが、松川には何ら効果がなかった。
「うるっ…さいなぁ…!!!」
「…っ」
松川は持っていたバーボングラスを思い切り床に叩きつけた。粉々に割れてしまったグラスの破片が四方八方へと飛び散り、その小片が俺の頬を掠めた。たちまち傷口から流血し始め、生暖かい血の感触が頬を伝う。
「宇治、お前に何がわかるんだよ…え!?…いいよなァお前は。子役の時からずっと売れっ子の引っ張りだこ。俺と同時期にデビューしたにもかかわらずお前だけ売れに売れてよォ…」
「な、何言ってんだよ松川…!!そんなこと…」
「あ〜あ〜あ〜!!やっぱりわかってねェんだなお前は!!いつもそうだった…比べられるんだよ、俺とオマエは!!それでいつもいつもいっっっつもお前が1番で俺が2番。どれだけ努力しても、所詮俺は脇役。お前は主役。お前だけがいつも上へ上へ行く…!!」
松川の目から幾粒もの涙が零れ落ちる。
「主役の座、最優秀俳優賞、名誉…お前はいつもいつも、そうやって欲しいものを手に入れる。何の苦労もせず、淡々と…!!!」
「おい待て、どうしたんだよ!落ち着けって松川!今はそんな話をしたい訳じゃない!!」
俺はすっかり取り乱してしまった松川を止めようと両肩を掴むも、下腹部に松川からの強めの肘打ちを食らい、呆気なく吹っ飛ばされた。
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