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「っ…!?なんで…」
松川の予期せぬ発言に思わず俺はうろたえてしまった。
その様子がよっぽど可笑しかったのだろう、松川は再び大声で笑う。
「ミエミエなんだよなァ〜。誰も気づかないとでも思ってたのかよ、あんなに気色悪い目でジトジト見つめやがって」
「なっ…!?そんなこと…!!」
無自覚な、それでも確かな自分の行動に情けなくなり、返す言葉が見当たらない。
「目障りなんだよ、お前。俺の俳優人生もめちゃくちゃにしてきた上、唯音のことも散々振り回してくれたしなァ…?」
そう言うと、松川は立ち尽くし動けなくなってしまった俺の周りをぐるぐると回り始めた。
ある程度回ったところで不意にピタッと足を止めると、松川は不敵な…不穏な微笑を浮かべた。
「あぁ、残念だったな宇治。まだ遊びに付き合ってやってもいいが、そろそろ時間だ。俺、大事な用事を思い出しちまった」
松川の目は据わっておらず、すっかり気が狂ったような様子だった。
荷物をパッと手に取ると、次の瞬間松川は一気にショットバーから駆け出していった。
「お、おい…何すんだよ。用事ってなんだ!!どこ行くんだ!!」
俺はバーの奥に隠れすっかり怯えてしまったマスターに何度もペコペコと頭を下げ軽く謝罪をし、ツケ払いを依頼すると、俺はすぐに松川の後を急ぎ足で追いかけた。
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