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その時だった。
突然、鮎川の家の中から女性のものと思しき悲鳴が閑静な住宅街の外にまで響き渡った。
さらに、微かだが聞こえてくる声は「助けて、助けて」と涙まじりの救済を求めるものだった。
―――まずい!!急がなければ…
俺は即座に門を押し開け、駆け足で中に入ろうとした。
すると、突然体が強い力で後ろへ引っ張られ、俺は門の外へと引きずり出されてしまった。
驚いて引っ張られた方を振り向くと、先ほどとはまるで別人の、仕事中の…立派な警察官の凛々しい顔つきをした二人がそこにいた。
「宇治くん、君の言っていたことは正しかったね…すまない。ここは俺たちがいて幸運だったと思って、安心して俺たちに任せてくれ」
野田はそう言うと、樋口と共に門柱を抜け、玄関まで颯爽と走って行った。
念の為、と野田は玄関の扉を引くと、なんと鍵はかかっておらずすんなりと扉は開いてしまった。これには警察官である二人も唖然としている様子だったが、二人はすぐに切り替えて頷き合い、中へ入っていこうとした。
「あの!!ちょっと待ってください…!!」
中へ少し足を踏み入れかけた二人を、俺は引き留めた。
「どうしました?」
樋口は俺の方へ少し振り返り、心配そうな顔をした。
「俺も、行きます」
門の扉を内側から閉じ、俺は二人のいる玄関先まで駆け寄った。二人は少し渋ったようだが、絶対に無駄な動きをせず自分たちの背後につくことを命じた上で許してくれた。
「それじゃ、突入するぞ」
野田の一声を合図に、俺たちは声のする方へと足早に向かっていった。
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