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「宇治さん、やはり危険ですのでここからは僕たち二人が行きます。心配かと思いますが、どうか安心してここで待っていてください」
樋口はそう言うと、垂れた目でにっこりと優しく微笑み俺の手をそっと解き、しっかりと握り締めてくれた。
「でも…」
とにかく不安で堪らず、何か俺にもできることはないかと口籠ると、今度は野田が俺の手を更にギュウウッと力強く握り締めた。
「何を言ってるんだ、俺たちは警察官だぞ。そこらのアマちゃんな男じゃねぇぜ。こいつの言う通り、彼女らを心配する気持ちは十二分にわかるが、もうモタモタしている暇がねぇのは分かるだろ?…絶対に俺たちが助ける。だからここから動かないで待っていてくれ」
野田の言葉に、樋口も何度も何度も首を縦に振った。
「…わかりました。どうか…どうかお願いします…鮎川を…いや、二人を必ず助けてください…!!」
俺は二人の真摯な姿と優しさに、張り詰めていた糸がぷつりと切れたような心地がした。刹那、ここまで堪えていた感情がすっかり露わになり少しだけ泣いてしまった。
二人は、そんな俺の情けなく窄まった肩を大丈夫だ、と言わんばかりにガッツリと掴んだ後、それぞれが警棒や拳銃を片手に勢いよく扉を開け、颯爽と中へ消えていった。
俺は二人を見送ると、少しの安堵と、いつの間にか恐怖で竦みフルフルと震えた脚をついに支えきれなくなり、膝からガクリと崩れ落ちた。
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