恋心収穫日和

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恋心収穫日和

 隣のクラスのあいつがやって来たのは、二時間目と三時間目を繋ぐ休み時間だった。 「おっす」 「おっす。珍しいじゃん、どったの?」 「世界史の教科書貸して。忘れた」 「世界史?んー……と、はい」 「サンキュ。昼休みに返すな」  おー、なんて返事して俺はまた机に突っ伏したけど。 「……あ、しまった」  やばい、と気付いた時にはもうあいつの姿はなくて。  くそう。 「ぜってー……からかわれる」  ***  そして、昼休み。  見覚えのある教科書と一緒に現れたあいつの顔にべったりと貼りついていたのは、案の定、満面の笑み。 「歴史のお偉いさんはみーんな俺と同じトコにほくろがあったんだな?」  乱暴に俺の頭を撫でると、口元をホクロごと綻ばせながら教室を出ていった。 「ホクロくらい昔の人だってあるだろ……」 「シャーペンで書いたのはないと思うけど?」  思わず零れた独り言についてきたのは、とっくにいなくなったはずのあいつの声。  至近距離から鼓膜を震わされ、背中がぞくぞくする。 「……何してんの」 「礼を言い忘れたと思って。好きだよ」 「……それ、礼じゃないし」 「相手が喜んでるなら礼になったってことだろ?」  ……くそう。  Fin
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